TeX/Manual

Babel

LaTeX には、多言語を扱う強力な Babel というパッケージがあります。欧米系の人文学で LaTeX を使う場合には必須といってよいパッケージです。

以下では Babel パッケージの使い方について解説します。最近の TeX のディストリビューションならば Babel は既に導入されているはずです。Babel の導入は非常に面倒なので、導入されていない場合は TeX のシステム自体を入れ直した方が早いかもしれません。TeX のインストールについては TeX/Install を参照してください。

現在解説を拡充中です。(元にしたページの関係で)完成するまではギリシア語に関する部分が主になってしまうことをご了承ください。

参考

user.pdf が簡便です。

Babel を使わずにギリシア語等を「ちょっとだけ」出力する方法

プリアンブルの指定

Babel パッケージを使用するために、プリアンブルの指定が必要です。「プリアンブル」とは、簡単にいえば \begin{document} より前の部分です。

エンコーディング

LaTeX では、D. Knuth 作成の CM(Computer Modern)というフォントが標準で使われますが、このフォントに含まれる文字は 128 種のみです。アクセントつきの文字はこの中に収まり切らないため、それらの文字はアクセント記号との合成で作ります。合成で作られた文字はハイフネーションができないなど、いろいろ不都合があります。

Babel パッケージを使用するときは、アクセントつきの文字が初めから含まれている EC(European Computer modern)フォントの使用が必須です。EC フォントを使用するには T1 エンコーディングというものを使う必要があります。プリアンブルに

\usepackage[T1]{fontenc}

と書いておきます。

言語の指定

まず、\usepackage コマンドで Babel パッケージを読み込みます。その際、オプション([ ] 内)に使用する言語を指定します。最後に書かれた言語が基底言語(デフォルトの言語)となります。

\usepackage[greek,latin,german,english]{babel}

上のように書くと、ギリシア語、ラテン語、ドイツ語、イギリス英語が扱え、イギリス英語が基底言語になります。

言語の属性の指定

一口にギリシア語といっても「現代」ギリシア語と「古典」ギリシア語があります。主な違いはアクセントの方式でしょう。現代ギリシア語は `monotoniko'(単式アクセント)ですが、古典ギリシア語は `polutoniko'(複式アクセント*1)です。Babel ではこれらを区別します。属性(attribute)を指定するには、

\languageattribute{<language>}{<attribute>}

のように指定します。例えば古典ギリシア語ならば

\usepackage[greek,latin,german,english]{babel}
\languageattribute{greek}{polutoniko}

のように指定します。現代ギリシア語ならば属性(attribute)を指定する必要はありません。

言語、属性の指定の例

詳しくはそれぞれの言語のページを参照してください。

言語属性言語の指定属性の指定
イギリス英語english
ドイツ語german
オーストリアドイツ語austrian
フランス語french
イタリア語italian
ラテン語古典latin
中世latinmedieval
長短記号つきlatinwithprosodicmarks
ギリシア語現代greek
古典greekpolutoniko

Type 1 フォントの指定

ラテン文字の Type 1 フォントを使用するには、次のように書きます。

\usepackage{lmodern}

これで Latin Modern(LM)フォントを使うようになります。cm-super をインストールしている場合、この代わりに

\usepackage[10pt]{type1cm}

と書きます。

cbfont の Type 1 フォントをインストールしている場合は

\usepackage[10pt]{type1ec}

と書いておきます。

japanese パッケージ

Babel パッケージを使うと、見出しなどが基底言語用のものに変えられてしまいます。japanese パッケージを使用すると日本語に変えることができます。japanese パッケージを読み込むには、Babel とは独立に

\usepackage{japanese}

と書いて japanese パッケージを読み込みます。japanese パッケージを読み込むと次のエラーが出るようになりますが、問題ありません。

Package babel Warning: No hyphenation patterns were loaded for
(babel)                the language `Japanese'
(babel)                I will use the patterns loaded for \language=0 instead.

teubner パッケージ

古典学で使われる記号などを用いる場合は、teubner パッケージを用います。teubner パッケージを用いるには、プリアンブルに次のように書いておきます。

\usepackage{teubner}

なお、teubner パッケージを読み込むと自動的に

\languageattribute{greek}{polutoniko}

が設定されますので、この記述は省略します。

詳しい使い方については TeX/Manual/Babel/greekTeX/PackageFile/teubner をご覧ください。

本文中の記述

本文中でそれぞれの言語を使用するためのコマンドには次のようなものがあります。

コマンドはたらき
\selectlanguage{<lang>}以後、異なる言語を \selectlanguage で指定するまで lang の言語で組版する
\begin{otherlanguage}{<lang>}\end{otherlanguage} が出てくるまで lang の言語で組版する
\foreinlanguage{<lang>}{text}text の部分を lang で指定された言語で組版する
\textlatin{text}ラテン文字以外で記述されているテキストの中にラテン文字で記述されている text を挿入する
\textgreek{text}ギリシア文字以外で記述されているテキストの中にギリシア文字で記述されている text を挿入する

通常は \selectlanguage を用い、他の言語の引用には \begin{otherlauguage} を、単語レベルでの引用には \foreignlanguage を用いるとよいでしょう。

\textgreek を使うと、気息記号などがうまく出力されないことがあるようです。

省略

上のコマンドは長いので不便です。省略用のコマンドを作っておくといいでしょう。プリアンブルに

\newcommand{\SG}{\selectlanguage{greek}}
\newcommand{\SE}{\selectlanguage{english}}

などと書いておけば、\SG や \SE と書くだけでギリシア語や英語に切替えられます。

言語ごとの入力方法


*1 気息記号などを含めてこういいます。

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