LaTeXでよく用いられているギリシア語用のフォントの1つにcbfontsがあります.以下ではこのcbfontsについて記述します.
ギリシア語のフォントにはもともとローマ文字のようなローマン体(直立体),イタリック体などという区別がありませんが,現在ではそれからの類推で,以前から存在した書体を直立体,イタリック体などとみなしたり,それぞれ新しくデザインしたりすることが多くなっています.
CBフォントには主に以下のような書体が含まれています.
[ ]内は,一般に使われているギリシア語書体の名前です.CBフォントに含まれる書体はそれらを「似せて」作ったものです.Didotはフランスの出版物に,LipsiakosはB. G. Teubner社の出版物に,New HellenicはCambridge University Pressの出版物によく使われています.
サンセリフ体やタイプライタ体にもそれぞれ太字体や斜体などが用意されています.
Computer Modern以外のフォント(パッケージ)を利用してcbgreekフォントを使うと,コンパイルの際に次のような警告が出てしまいます.
LaTeX Font Warning: Fontshape `LGR/lmr/m/n' undefined (Font) using `LGR/cmr/m/n' instead on input line 162. ... LaTeX Font Warning: Fontshape `LGR/lmr/bx/n' undefined (Font) using `LGR/lmr/m/n' instead on input line 399.
太字や斜体を使っていれば,それが反映されず,全てローマン体になってしまいます.これはComputer Modern以外に対応したフォント定義ファイルがないためです.
対応方法についてはTeX/Font/fdをご覧ください.
実はこのままではteubnerパッケージを使用した\Lipsiakostext, \textLipsiasといったコマンドを使用しても,Lipsiakosフォントが使われず,Olgaフォントが使われてしまいます*1.原因はlgrlmr.fdの次の行です.
\EC@family{LGR}{lmr}{m}{it}{grmi}
これは,lmrでmediumシリーズのイタリック(it)を使用する場合,grmiというフォントテーブルを使うという意味です.Lipsiakosフォントが収められているテーブルはgrmlです.grmiをgrmlに書き換えればよいでしょう.
teubner.styには次のような記述があります.
\expandafter\EC@family\expandafter{\GRencoding@name}{cmr}{m}{it}{grml}
これと同様の記述を,それぞれのフォントに対して定義すれば,.fdファイルを書き換えなくてもLipsiakosフォントが使えるような気がします.例えばプリアンブルに,
\makeatletter \expandafter\EC@family\expandafter{\GRencoding@name}{pnc}{m}{it}{grml} \makeatother
と書いておけばNew CenturyでもLipsiakosフォントを使えそうです.
cbgreekには他にもいろいろなフォントが収められています.それらのフォントテーブルを取り出して比較してみるのもよいでしょう.TeXにおけるフォントにフォントテーブルの参照の仕方についての解説があります.
${TEXMFDIST}/doc/fonts/cbgreek/cbgreek.txtに*.mfファイルの命名の規準についての解説があります.
TeXLive (2012)では標準でインストールされていますので以下の作業は必要ありません.TeXLive 2012のインストールについては次のページを見てください.
このページの一番下に添付されています.下に解説した「調整」も行っています.下の「調整」が必要なければ,下の解説を参考にして不必要な作業を行っているところを#でコメントアウトしてください.
CTANについてはTeX用語集をご覧ください.
が必要なファイル一式をまとめたものです.
以下に個々のファイルがあります.
適当なところに展開します.ここでは,シェルスクリプトに合わせて/var/tmp/texfontsworkに展開します.
$ mkdir /var/tmp/texfontswork $ cp cbfonts.zip /var/tmp/texfontswork $ cd /var/tmp/texfontswork $ unzip cbfonts.zip
cbfonts.zipを展開すると
というディレクトリができるので,それぞれの下にあるファイルをTeXにおけるフォントの「フォントの配布」にある規則にしたがってインストールします.インストールする際のディレクトリ名は「cbgreek」にします.例えばencodingsディレクトリの下にあるCB.enc, gmtr.encファイルは
ディレクトリにコピーします.
# mktexlsr # updmap-sys --nomkmap --enable Map=cbgreek.map # updmap-sys
実は,CTANで配布されているcbgreekのType1フォントにはLipsiakosフォント(grml1000.pfb)が含まれていません.そのため,PDFファイルやPSファイルにはビットマップフォントが使われて汚くなってしまいます.
以前のcbフォントにはgrml1000.pfbが含まれていましたので,(バージョンが古いのを我慢すれば)それを使うことも可能です.ただし今はcbフォントを入手することができませんので,ここに置いておきました.他にmftrace,TeXtrace等を使って.mfファイルからType1フォントを生成することも可能ですが,TeXtraceでの変換はそれほど簡単ではありません.
CTANの配布物にgrml1000.pfbが含まれるようになればよいのですが,とりあえずの処置として以前のcbフォントに含まれるgrml1000.pfbを用いる手順を解説します.