ギリシア語の場合、言語と属性は以下のようになります。
言語 | 属性 | 言語の指定 | 属性の指定 |
---|---|---|---|
ギリシア語 | 現代 | greek | |
古典 | greek | polutoniko |
次のような指定にすればよいでしょう。
\usepackage[greek]{babel} \languageattribute{greek}{polutoniko}
teubner パッケージを読み込んでいる場合は \languageattribute が自動的に polutoniko に設定されます。
uptex を使い、inputenc パッケージを使えば、原稿を UTF-8 で書くことができます。プリアンブルは次のようにします。
\documentclass[a4paper,12pt,uplatex]{jsarticle} \kcatcode`α=15 \kcatcode`ἀ=15 \usepackage{ucs} \usepackage[utf8x]{inputenc} \usepackage[greek,english,japanese]{babel} \languageattribute{greek}{polutoniko}
Babel パッケージを用いる場合には、ギリシア語の記法は以下のようになります。
上段が出力、下段が入力です。
文字 | α | β | γ | δ | ε | ζ | η | θ | ι | κ | λ | μ | ν | ξ | ο | π | ρ | σ | τ | υ | φ | χ | ψ | ω |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
表記 | a | b | g | d | e | z | h | j | i | k | l | m | n | x | o | p | r | s, c | t | u | f | q | y | w |
大文字を出力するには、入力するアルファベットを大文字にします。「語中の sigma」と「語末の sigma」は自動的に処理されます。三日月型 sigma(c の形をした sigma)は通常の cbgreek フォントでは使えませんが、いくつかの作業を施せば使えるようになります。次のページを参照してください。
sigma を単独で出力しようとすると、語末だと判断されてしまうため、語末の sigma になってしまいます。これを語中の sigma と認識させるには、使われていないアルファベット `v' を後置して
sv
のように記述するか、\noboundary というコマンドを使って
s\noboundary
と記述します。
このテクニックは校訂用記号を使う場面で多用します。
アクセントと気息記号は、以下の記号を付けたい文字の前に置くことによって表すことができます(ただしイオタサブスクリプトと分離記号は後に置く)。ただし、以下の記法を用いるとカーニングの処理がうまくいかず、文字がパラつく(文字の間隔があきすぎてしまう)ことがあります。teubner パッケージの記法を使うことをお勧めします。
アクセントと気息記号 | 記法 |
---|---|
鋭アクセント | ' |
重アクセント | ` |
曲アクセント | ˜ |
有気息記号 | < |
無気息記号 | > |
イオタサブスクリプト | ¦ |
分離記号 | " |
句読点 | 記法 |
---|---|
ピリオド | . |
セミコロン | ; |
エクスクラメーションマーク | ! |
コロン | : |
クエスチョンマーク | ? |
左アポストロフィ | `` |
右アポストロフィ | '' |
左引用符 | (( |
右引用符 | )) |
エリジョン | '' |
teubner パッケージを用いると、次のようなコマンド、記法が使えるようになります(teubner パッケージを使っていても、Babel パッケージの記法は有効です)。
アクセント記号がついた文字は、\as のように表します。
アクセント記号がついた文字を記述するには、おおよそ次のような原則で、1から順番に記したコマンドで表します。以下の記法が適用されるのは小文字だけです。大文字については Babel パッケージの記法を用いて >A のようにします。
ただし、\or というコマンドは他で使われているので、\oR と記します。
最後の半角スペースは、コマンドの終了を表すためのものです。例えば次のような例を考えて下さい。(αγαθοσです。)
\as gaj\oa s
これを
\asgaj\oas
と書いてしまうと、\asgaj がひとかたまりでコマンドを表すことになってしまいます*1。ところが、\asgaj というコマンドは存在しないので、エラーになります。半角スペースがあれば、そこでコマンドが終了していると判断されますので、正しく処理されます。
しかし、LaTeX では「複数の半角スペースは1つのものと数える」という規則があるため、και το を次のように書いてしまうと、二つの単語がくっついてしまいます。
ka\ig t\oa
この場合、\ig のあとに、見えない区切り記号 {} を挿入します。
ka\ig{} t\oa
すると t の前の半角スペースがスペースとして認識されます。
では、\ig などのコマンドの後には必ず {} を入れるようにすればいいのでしょうか? 残念ながら厳密にいうとこの方法は正しくありません。{} を入れてしまうと、文字のカーニングがうまくいかなくなります。{} は上のような限られた場合にのみ使って下さい。
なお、コマンドのあとが記号の場合、半角スペースなどの区切り記号は省略します。例えば \oR\aa、\ig, など。
Lipsiakos フォントを用いる場合は、その部分を
\textLipsias{}
で囲みます。あるいは
\Lipsiakostext
と書いておくと、
\NoLipsiakostext
が現れるまで Lipsiakos フォントを用います。なお以上の場合は、言語の選択(\selectlanguage{xxxx}) は必須ではありませんが、ハイフネーションを正しく行うためには選択しておく必要があります。
Didot フォントを使用する場合は、その部分を
\textDidot{}
で囲みます。
アクセントなどのつかないギリシア語アルファベットと日本語の間のスペースは正しく処理されますが、アクセントなどのついた(=コマンドとして表す)ギリシア語アルファベットと日本語の間のスペースは正しく処理されず、くっついてしまいます。これを防ぐためには、そのコマンドと日本語の間に半角スペースを挿入します。コマンドと日本語の間で入力ファイルの行が折り返されるときは、行末に \ を挿入するか、行末に半角スペースに続けて %(半角で)を入力します。この現象と似た現象については『美文書作成入門』(改訂第3版)p.77 を参照して下さい。