TeX のギリシア語フォントとしては、以前は Claudio Beccari 作のフォント(cb)が使用されていましたが、2004年に Apostolos Syropoulos によって更新されて cbfonts という名前に変わりました。teTeX 3.0 にも .mf ファイルは含まれていますが Type 1 フォントは含まれていないので、高品質の PDF/PS ファイルを作る際にはインストールしておいた方がよいでしょう。
CB フォントは T1 エンコーディング(Cork エンコーディング)に基づいていますが、昔からの慣習で LGR エンコーディング(ローカルなギリシア語のエンコーディング)と呼ばれています。TeX の世界ではまだギリシア語のエンコーディングが確立していないためです。
ギリシア語のフォントにはもともとローマ文字のようなローマン体(直立体)、イタリック体などという区別がありませんが、現在ではそれからの類推で、以前から存在した書体を直立体、イタリック体などとみなしたり、それぞれ新しくデザインしたりすることが多くなっています。
CB フォントには主に以下のような書体が含まれています。
[ ] 内は、一般に使われているギリシア語書体の名前です。CB フォントに含まれる書体はそれらを「似せて」作ったものです。Didot はフランスの出版物に、Lipsiakos は B. G. Teubner 社の出版物に、New Hellenic は Cambridge University Press の出版物によく使われています。
サンセリフ体やタイプライタ体にもそれぞれ太字体や斜体などが用意されています。
このページの一番下に添付されています。下に解説した「調整」も行っています。下の「調整」が必要なければ、下の解説を参考にして不必要な作業を行っているところを # でコメントアウトしてください。
CTAN については TeX 用語集 をご覧ください。
が必要なファイル一式をまとめたものです。
以下に個々のファイルがあります。
適当なところに解凍します。ここでは、シェルスクリプトに合わせて /var/tmp/texfontswork に解凍します。
$ mkdir /var/tmp/texfontswork $ cp cbfonts.zip /var/tmp/texfontswork $ cd /var/tmp/texfontswork $ unzip cbfonts.zip
cbfonts.zip を解凍すると
というディレクトリができるので、それぞれの下にあるファイルを TeX におけるフォント の「フォントの配布」にある規則にしたがってインストールします。インストールする際のディレクトリ名は「cbgreek」にします。例えば encodings ディレクトリの下にある CB.enc, gmtr.enc ファイルは
ディレクトリにコピーします。
# mktexlsr # updmap-sys --nomkmap --enable Map=cbgreek.map # updmap-sys
Computer Modern 以外のフォント(パッケージ)を利用して cbgreek フォントを使うと、コンパイルの際に次のような警告が出てしまいます。
LaTeX Font Warning: Font shape `LGR/lmr/m/n' undefined (Font) using `LGR/cmr/m/n' instead on input line 162. . . . LaTeX Font Warning: Font shape `LGR/lmr/bx/n' undefined (Font) using `LGR/lmr/m/n' instead on input line 399.
太字や斜体を使っていれば、それが反映されず、全てローマン体になってしまいます。これは Computer Modern 以外に対応したフォント定義ファイルがないためです。
対応方法については TeX/Font/fd をご覧ください。
実はこのままでは teubner パッケージを使用した \Lipsiakostext, \textLipsias といったコマンドを使用しても、Lipsiakos フォントが使われず、Olga フォントが使われてしまいます*1。原因は lgrlmr.fd の次の行です。
\EC@family{LGR}{lmr}{m}{it} {grmi}
これは、lmr で medium シリーズのイタリック(it)を使用する場合、grmi というフォントテーブルを使うという意味です。Lipsiakos フォントが収められているテーブルは grml です。grmi を grml に書き換えればよいでしょう。
teubner.sty には次のような記述があります。
\expandafter\EC@family\expandafter{\GRencoding@name}{cmr}{m}{it} {grml}
これと同様の記述を、それぞれのフォントに対して定義すれば、.fd ファイルを書き換えなくても Lipsiakos フォントが使えるような気がします。例えばプリアンブルに、
\makeatletter \expandafter\EC@family\expandafter{\GRencoding@name}{pnc}{m}{it} {grml} \makeatother
と書いておけば New Century でも Lipsiakos フォントを使えそうです。
実は、CTAN で配布されている cbgreek の Type 1 フォントには Lipsiakos フォント(grml1000.pfb)が含まれていません。そのため、PDF ファイルや PS ファイルにはビットマップフォントが使われて汚くなってしまいます。
以前の cb フォントには grml1000.pfb が含まれていましたので、(バージョンが古いのを我慢すれば)それを使うことも可能です。ただし今は cb フォントを入手することができませんので、ここ に置いておきました。他に mftrace, TeXtrace 等を使って .mf ファイルから Type 1 フォントを生成することも可能ですが、TeXtrace での変換はそれほど簡単ではありません。
CTAN の配布物に grml1000.pfb が含まれるようになればよいのですが、とりあえずの処置として以前の cb フォントに含まれる grml1000.pfb を用いる手順を解説します。
cbgreek には他にもいろいろなフォントが収められています。それらのフォントテーブルを取り出して比較してみるのもよいでしょう。TeX におけるフォント にフォントテーブルの参照の仕方についての解説があります。
${TEXMFDIST}/doc/fonts/cbgreek/cbgreek.txt に *.mf ファイルの命名の規準についての解説があります。