eLearning/Metre/09_IndividualMetres/02_Ionic/02_Iambic_Trochaic/01_IambicTrimeter
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[[eLearning/Metre]] *イアンボス・トリメトロス [#vf3a3c3d] u - という長短の組み合わせ(脚)のことを''イアンボス''(ἴαμβος; iambus ['''OLD''' s.v. 1]; iamb)といい、x - u - というメトロン(μέτρον, metron; metrum; meter)のことを''イアンベイオン''(ἰαμβεῖον [sc. μέτρον]; iambeus; iambic meter)という。イアンベイオンが3つ組合わされたものが''イアンボス・トリメトロス''(ἴαμβος τρίμετρος; iambus ['''OLD''' s.v. 2]; iambic trimeter)である。悲劇のせりふの大部分は、''1行ごとに''(κατὰ στίχον; stichic)イアンボス・トリメトロスが繰り返される形をとる。 :イアンボス・トリメトロス|&size(16){x - u - x - u - x - u - ||}; **カエスーラ [#g8888ace] イアンボス・トリメトロスにおいては、行の中で単語の終わりがよくくる位置があり、その位置のことを''カエスーラ''(caesura)という。カエスーラは第5音節の後にくることが多く(penthemimeral caesura)、その位置にカエスーラがない場合は第7音節の後にくる(hepthemimeral caesura)。 :カエスーラ|&size(16){x - u - x | - u | - x - u - ||}; まれに第3脚目の終わりにカエスーラが置かれるが、エウリーピデースの場合いつもエリジョンを伴う。 **Porson の法則 [#b4248f1a] 3つ目の anceps(第9音節)には韻律上の制限が加わり、これを ''Porson の法則''(Lex Porsoniana; Porson's Law)という。これは次のようなものである。 +まず、3つ目の anceps が単音節語の場合は、以下の考察の対象から除いておく。 +3つ目の anceps が長( - )の場合と短( u )の場合で表現の仕方が異なる。 ++3つ目の anceps が長ならば、その anceps の後に単語の終わりはこない(表現方法1)。 ++3つ目の anceps の後に単語の終わりがくるならば、その anceps は短である(表現方法2)。 i, ii が対偶になっていることがわかれば、どちらか一方を覚えるだけでよい。 Porson の法則を図示すれば次のようになる。なお、例えば `-' は、「この長音節に注目すべき」を表す。 :Lex Porsoniana|単音節語の場合を除く。 ::表現方法1|&size(16){x - u - x - u - `-'_- u - ||}; ::表現方法2|&size(16){x - u - x - u - `u' | - u - ||}; 表現方法1の場合は、3つ目の anceps とその次の音節の間に、あたかも橋が渡されているようになっていることから、''Porson の橋''(Porson's Bridge)ということもある。 **分解 [#t5690b1a] 今までみてきたイアンボス・トリメトロスは1行が12音節から成っていたが、実際には、そのうちの長音節が短音節2つで置き換えられる場合があり、この現象を''分解''(resolution)と呼ぶ。分解が起こりやすいのは(分解する前の)第2, 4, 6, 8音節(長音節)と第1音節(anceps)である。固有名詞の場合は(韻律に合わせるのが難しいので)第5, 9音節(anceps)が分解されることがあり、もともと短音節である第3, 7音節が短音節2つに分解されることもある。 なお、エウリーピデースの場合、劇の年代が下るにつれて分解の頻度が高くなることを Gottfried Hermann が1807年に発見した((G. Hermann, '''Observationes de Graecae linguae dialectis''' (Lipsiae [Leipzig], 1807), §9 = '''Opuscula''', i (Lipsiae [Leipzig], 1827), [[136:http://books.google.co.jp/books?id=aDQSAAAAIAAJ&pg=PA129&dq=hermann+observationes+graecae+linguae&lr=&as_brr=0#PPA136,M1]]: `Patet vero, vicissim e diligentia poetae vel negligentia aetatem fabulae elucescere.'))。これを用いて上演時期が不明な劇の年代を推測することが行われている((cf. E.B. Ceadel, `Resolved Feet in the Trimeters of Euripides and the Chronology of the Plays', '''CQ''' 35 (1941), 66--89.))。
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[[eLearning/Metre]] *イアンボス・トリメトロス [#vf3a3c3d] u - という長短の組み合わせ(脚)のことを''イアンボス''(ἴαμβος; iambus ['''OLD''' s.v. 1]; iamb)といい、x - u - というメトロン(μέτρον, metron; metrum; meter)のことを''イアンベイオン''(ἰαμβεῖον [sc. μέτρον]; iambeus; iambic meter)という。イアンベイオンが3つ組合わされたものが''イアンボス・トリメトロス''(ἴαμβος τρίμετρος; iambus ['''OLD''' s.v. 2]; iambic trimeter)である。悲劇のせりふの大部分は、''1行ごとに''(κατὰ στίχον; stichic)イアンボス・トリメトロスが繰り返される形をとる。 :イアンボス・トリメトロス|&size(16){x - u - x - u - x - u - ||}; **カエスーラ [#g8888ace] イアンボス・トリメトロスにおいては、行の中で単語の終わりがよくくる位置があり、その位置のことを''カエスーラ''(caesura)という。カエスーラは第5音節の後にくることが多く(penthemimeral caesura)、その位置にカエスーラがない場合は第7音節の後にくる(hepthemimeral caesura)。 :カエスーラ|&size(16){x - u - x | - u | - x - u - ||}; まれに第3脚目の終わりにカエスーラが置かれるが、エウリーピデースの場合いつもエリジョンを伴う。 **Porson の法則 [#b4248f1a] 3つ目の anceps(第9音節)には韻律上の制限が加わり、これを ''Porson の法則''(Lex Porsoniana; Porson's Law)という。これは次のようなものである。 +まず、3つ目の anceps が単音節語の場合は、以下の考察の対象から除いておく。 +3つ目の anceps が長( - )の場合と短( u )の場合で表現の仕方が異なる。 ++3つ目の anceps が長ならば、その anceps の後に単語の終わりはこない(表現方法1)。 ++3つ目の anceps の後に単語の終わりがくるならば、その anceps は短である(表現方法2)。 i, ii が対偶になっていることがわかれば、どちらか一方を覚えるだけでよい。 Porson の法則を図示すれば次のようになる。なお、例えば `-' は、「この長音節に注目すべき」を表す。 :Lex Porsoniana|単音節語の場合を除く。 ::表現方法1|&size(16){x - u - x - u - `-'_- u - ||}; ::表現方法2|&size(16){x - u - x - u - `u' | - u - ||}; 表現方法1の場合は、3つ目の anceps とその次の音節の間に、あたかも橋が渡されているようになっていることから、''Porson の橋''(Porson's Bridge)ということもある。 **分解 [#t5690b1a] 今までみてきたイアンボス・トリメトロスは1行が12音節から成っていたが、実際には、そのうちの長音節が短音節2つで置き換えられる場合があり、この現象を''分解''(resolution)と呼ぶ。分解が起こりやすいのは(分解する前の)第2, 4, 6, 8音節(長音節)と第1音節(anceps)である。固有名詞の場合は(韻律に合わせるのが難しいので)第5, 9音節(anceps)が分解されることがあり、もともと短音節である第3, 7音節が短音節2つに分解されることもある。 なお、エウリーピデースの場合、劇の年代が下るにつれて分解の頻度が高くなることを Gottfried Hermann が1807年に発見した((G. Hermann, '''Observationes de Graecae linguae dialectis''' (Lipsiae [Leipzig], 1807), §9 = '''Opuscula''', i (Lipsiae [Leipzig], 1827), [[136:http://books.google.co.jp/books?id=aDQSAAAAIAAJ&pg=PA129&dq=hermann+observationes+graecae+linguae&lr=&as_brr=0#PPA136,M1]]: `Patet vero, vicissim e diligentia poetae vel negligentia aetatem fabulae elucescere.'))。これを用いて上演時期が不明な劇の年代を推測することが行われている((cf. E.B. Ceadel, `Resolved Feet in the Trimeters of Euripides and the Chronology of the Plays', '''CQ''' 35 (1941), 66--89.))。
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