[[eLearning/Metre]]

*アイオリス風 [#f92ebc2a]

**アイオリス風コーロン [#l9c1dd60]

「アイオリス風」と呼ばれる韻律は、必ずしもアイオリスの詩人に限って使われるわけではなく、例えばピンダロスや劇においてもよく使われる。したがって「アイオリス風」というのは一般的な呼称であることに注意する必要がある。アイオリス風の韻律の多くは(イオーニアーなどの韻律とは違って)非対称的なコーロンから成り、メトロンや脚に分けられないのが特徴である。

***グリュコーン風 [#d018208e]

|~韻律|~他のコーロンとの関係|~略号|~名称|
|x x - u u - u -|---|gl|glyconic|
|x x - u u - -|gl^|ph|pherecratean|
|x - u u - u -|^gl|tl|telesillean|
|x - u u - -|tl^ (^gl^)|r|reizianum|

***ヒッポーナクス風 [#e54f424e]

|~韻律|~他のコーロンとの関係|~略号|~名称|~由来|
|x x - u u - u - -|---|hi|hipponactean||
|x -  u u - u - -|^hi|hag|hagesichorean|Ἁγησιχόρα μὲν αὕτα|

***アリストパネース風 [#i391bcf8]

|~韻律|~他のコーロンとの関係|~略号|~名称|
|- u u - u - -|---|ar|aristophanean|

***ドードランス [#f137f3ab]

O. Schroeder による命名で((O. Schroeder, '''Griechische Singverse''' (Leipzig, 1924), 61.))、ラテン語で「4分の3」を意味する dodrans からきている。グリュコーン風コーロンの4分の3という意味である。

|~韻律|~他のコーロンとの関係|~略号|~名称|~由来|
|- u u - u -|---|dod|dodrans||
|- u u - -|dod^|ad|adonean|ὤ τὸν Ἄδωνιν|

dodrans は伝統的に Hor. '''C'''. 1.1 で覚えられてきた。

CENTER:Maecenas atavis | edite regibus ( o o - u u - | - u u - u - )

o o - u - の方は、dod を逆にした(anaclasis)形である。

***他の韻律単位 [#q1b2e12f]

アイオリスの詩においては、イオーニアーなどで使われる韻律単位が使われることもよくある。

|~韻律|~略号|~名称|~由来|
|x - u - x - u -|2ia|||
|x - u - u - -|2ia^|||
|- u - x - u - x|2tr|||
|- u - x - u -|lk|lekytion|ληκύθιον ἀπώλεσεν|
|- u - u - -|ith|ithypallic||
|x - u - x|pe|penthemimer||
|u u - - u u - -|2io|||
|u u - u - u - -||anacreontic||

***組み合わせ [#ue5a1fbb]

上に挙げた基本コーロンは、そのままでピリオドを形成することもあるが、それらの組み合わせで1つのコーロンになっている場合もよくある。よくある韻律の拡大方法は次の通りである。

+x - u -(ia)か - u -(^ia)を前につける。
+x - u -(ia)か u - -(ia^)を後につける。
+内部的拡大(internal expansion)
++ダクテュロスを間に挟む(<- u u>)。
++''コリアンボス''(χορίαμβος; choriambus; choriamb)を間に挟む(<- u u ->)。

例えば gl や hag を上の方法で拡大すると次のようになる。

-x x - u u <- u u - u u> - u - = gl [2d]((e.g. Sapph. 44LP.))
-x - u u - <- u u -> u - - = hag [c]

**アナクラーシス [#a0be008b]
**アナクラシス [#a0be008b]

コーロンの中の特定の場所の要素を転置することが許される韻律があり、そのような現象を''アナクラーシス''(ἀνάκρᾶσις, anakrasis; anacrasis)という。同じ韻律で、アナクラーシスを起こしていないものと、アナクラーシスを起こしているものが韻律対応することは許されている。
コーロンの中の特定の場所の要素を転置することが許される韻律があり、そのような現象を''アナクラシス''(ἀνάκλασις, anaklasis; anaclasis)という。同じ韻律で、アナクラシスを起こしていないものと、アナクラシスを起こしているものが韻律対応することは許されている。

CENTER:&size(16){x x - u u - u - <=> - u u - u - u -};

**レスボスの詩人(サッポーとアルカイオス) [#f87f9dc3]

アイオリスの抒情詩人で作品が残っているのはほぼサッポーとアルカイオスに限られる。この2人の詩は2--4詩行からなるストロペー型(strophic)の詩である。3--4詩行からなる場合は、そのうちの少なくとも1詩行は他の詩行と異なる。

サッポーによく見られる詩型として、サッポー風スタンザ(Sapphic stanza)があり((サッポーの第1巻に含まれる詩ははすべてこの韻律で作られていたと考えられる。))、これは次のように分析される。

:サッポー風スタンザ|&size(16){- u - x - u u - u - - ||};&br;&size(16){- u - x - u u - u - - ||};&br;&size(16){- u - x - u u - u | -_x | - u u - - |||};

第3詩行は第1, 2詩行の拡大形とみなすことができる。アレクサンドレイア以降の校訂本においては、伝統的にはこれは4行として書かれてきた。

:サッポー風スタンザ(4行)|&size(16){- u - x - u u - u - - ||};&br;&size(16){- u - x - u u - u - - ||};&br;&size(16){- u - x - u u - u | -_x |};
>&size(16){- u u - - |||};

ホラーティウスもサッポー風スタンザは4行から成っていると考えていたと思われる。

アルカイオス風スタンザ(Alcaic stanza)は次のように分析される。

:アルカイオス風スタンザ|&size(16){x - u | - x | - u u - u - ||};&br;&size(16){x - u | - x | - u u - u - ||};&br;&size(16){x - u | -_x - u -_x | - u u - u u - u - - |||};

:アルカイオス風スタンザ(4行)|&size(16){x - u | - x | - u u - u - ||};&br;&size(16){x - u | - x | - u u - u - ||};&br;&size(16){x - u | -_x - u -_x |};
>&size(16){- u u - u u - u - - |||};

***サッポーの「アブノーマルな」詩 [#hc7fe060]

サッポーには、叙事詩の韻律、音律と語法を用い、レスボス方言で作られた詩が存在する。レスボスの詩に叙事詩の韻律、音律、語法が出てくるのは非常に珍しいことなので、そのような詩のことをサッポーの「アブノーマルな」詩(`abnormal' poems)という((E. Lobel, '''Σαπφοῦς μέλη''' (Oxford, 1925).))。

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