[[eLearning/Metre/Ionia]] *ヘクサメトロス [#ofe951ee] ダクテュロス・ヘクサメトロスは''ダクテュロス''(δάκτυλος ; dactulus; dactyl; i.e. - u u )と呼ばれる脚(foot)またはメトロンが6回繰り返され、第6脚が終止形をもっている(catalectic)もののことをいう。 :ヘクサメトロス|&size(16){- (- u u) - (- u u) - | (- u | u) - (- u_u) - (- u u) - - ||}; 第3脚の長の後か第3脚の1つ目の短の後に単語の切れ目が置かれることが多く、前者の切れ目のことを''男性的カエスーラ''(masculine caesura)、後者を''女性的カエスーラ''(feminine)と呼ぶ。このどちらかに切れ目が置かれることが普通だが、まれにこの位置に切れ目が置かれないことがあり(『イーリアス』で14回、『オデュッセイア』で9回、ヘーシオドスで22回)、この場合は第4脚の長の後に単語の切れ目が置かれる。男性的カエスーラと女性的カエスーラの割合は 4:3 くらいである。 :男性的カエスーラ|&size(16){- u u - u u - | u u - u u - u u - - ||}; :女性的カエスーラ|&size(16){- u u - u u - u | u - u u - u u - - ||}; :上のどちらも起こらない場合|&size(16){- u u - u u - u u - | u u - u u - - ||}; 第3脚の長の後のカエスーラのことは、''2分の5脚カエスーラ''(πενθημιμερής [sc. τομή]; penthemimeris [sc. tome]; penthemimeral caesura)、第4脚の長の後のカエスーラのことは''2分の7脚カエスーラ''(ἑφθημιμερής; hepthemimeris; hephthemimeral caesura)と呼ばれる。 **コーロン [#p30441dc] ヘクサメトロスは「ダクテュロスが6脚」だと考えられているわけであるが、カエスーラの考察より、むしろ2つのコーロンからなっていると考えた方がよい。 :hemiepes (D)|&size(16){- u u - u u -}; :paroemiac|&size(16){x - u u - u u - - , (u u -) - u u - u u - -}; というコーロンは他の韻律にも現れるからである。したがって脚ではなくて、上のようなコーロンがヘクサメトロスの基本的な韻律の単位である。実際定型句はこれらのコーロンを埋めるように作られている。 ヘクサメトロスはしたがって次のように書ける。 :ヘクサメトロス(2コーロン)|&size(16){D | (- u | u) D - ||}; **韻律上の制限 [#k0ac867c] :σπονδειάζων|第5脚の2つの短が縮約(contraction)することはまれで、1/20 くらいの割合で起こる。 :Naeke の法則(Bucolic Bridge)((A.F. Naeke, '''RhM''' 3 (1845), 517.))|第4脚のビケプス(biceps)が長音節になっている場合、そのあとに単語末がくることは避けられる。すなわち、長になっている第4脚のビケプスと次の音節の間には架橋がある( - `-'_- u u - - || )。 :Wernicke の法則|第4脚のビケプス(biceps)を、位置によって長くなった(long by position)単語末の音節が占めることは避けられる。 :Hermann の法則(1805)|第4脚の短音節2つの間に単語の切れ目をおくことは避けられる(1/550 くらいの割合で例外がある)。 :Meyer の第1法則(1864)|第2脚が x - u や x - (- u u) で終わることは避けられる。 :Hilberg の法則|第2脚のビケプスが長音節になっている場合、そのあとに単語末がくることは避けられる( || - (- u u) - `-'_- . . . )。 **韻律上の長音節化 [#z5e10d91] ヘクサメトロスにおいては、u u u や u - - u というリズムをもつ単語を用いることができないので、例えばそれぞれ - u u や - - - u というリズムに変更される。この現象を''韻律上の長音節化''(metrical lengthening)という。 |>|~通常形|>|~韻律上の長音節化| |ὄνομα|u u u|οὔνομα|- u u| |Ὀλύμποιο|u - - u|Οὐλύμποιο|- - - u|