[[eLearning/Metre]]

*ピリオド(詩行) [#l555eccd]
*ピリオド [#l555eccd]

韻律上の区切りでもっとも重要なのはピリオドであるから、ピリオドがどのように構成されるかを知る必要がある。以下は主に West, '''Metre''', 4--5 による。
韻律上の区切りでもっとも重要なのはピリオドであるから、ピリオドがどのように構成されるかを知る必要がある。

+ピリオドの切れ目は単語の途中に置かれない。
+ピリオドの中に含まれる単語は、単語の切れ目や文法上の切れ目を無視して、あたかも1つのピリオドが1単語であるかのようにして、音節が分けられる。この状態を''シュナペイア''(συνάφεια, synapheia; synaphia)''の状態にある''という。
+逆に、ピリオド同士はシュナペイアの状態にない。したがって、ピリオドの最後の音節の韻律上の長さは、次のピリオドの最初の単語に左右されずに決定される。
+ピリオドの最後の韻律要素は長音節でも短音節でもよいことがある。長音節が期待される韻律要素を短音節が占めている場合、''長要素中に短音節が入っている''(brevis in longo, i.e. syllaba brevis in elemento longo)という。この場合に不足する長さは、休止(pause)によって補われる。
>古代においてはシュナペイアは、例えばアナパイストスのように「同じ脚がずっと続くこと」を表した。現在の意味とは違うので注意する必要がある。
**ピリオドの「終わり」 [#c375c0dc]

**ピリオドの終わりの属性 [#p527f10a]
ピリオドの終わりは次のような性質をもつ。

-以下の3点は必須である。
++ピリオドの終わりと単語の終わりは一致する。
++ピリオドの終わりではエリジョンは起こらない。
++ピリオドの終わりと単語の終わりは一致する。すなわちピリオドの終わりは単語の途中におかれない。
++ピリオドの終わりではエリジョンは起こらない。すなわち、ピリオドの終わりとピリオドの始まりの両方に母音がある場合、それらは必ず母音衝突を起こす。
++ピリオドの終わりの直前に後接辞はこない、逆にピリオドの終わりの直後(ピリオドの始まり)に前接辞はこない。
-以下の2点はそれぞれ起こることと起こらないことがある。
-以下の3点はそれぞれ起こることと起こらないことがある。
++母音衝突(hiatus)
++長要素中に短音節が入る(brevis in longo)
++韻律終止(κατάληξις, catalexis)

ピリオドの終わりは短要素(breve)にはならず、不定長要素(anceps)になることはまれである。よって、短音節(brevis)がピリオドの終わりにある場合は、''短音節が詩行の終わりにある''(brevis in fine versus)という。
韻律終止については後で詳しく扱う。

また、ピリオドの終わりは韻律終止(catalexis)によって明らかにされることがある。つまり、最後(ultimum)または1つ前の要素(paenultimum)に''韻律抑制''(suppression)が生じる場合がある。例えば
**シュナペイア [#wb9ce7b0]

CENTER:&size(20){u - u - | => u - - |};
ピリオドはシュナペイアによって特徴づけられる。


+ピリオドの中に含まれる単語は、単語の切れ目や文法上の切れ目を無視して、あたかも1つのピリオドが1単語であるかのようにして、音節が分けられる。この状態を''シュナペイア''(συνάφεια, synapheia; synaphia)''の状態にある''という。
>古代においてはシュナペイアは、例えばアナパイストスのように「同じ脚がずっと続くこと」を表した。現在の意味とは違うので注意する必要がある。
<
+逆に、ピリオド同士はシュナペイアの状態にない。したがって、ピリオドの最後の音節の韻律上の長さは、次のピリオドの最初の単語に左右されずに決定される。

CENTER:&size(20){- u - x | => - u - |};
**長要素中の短音節 [#d00ecc5e]

がそうである(「=>」の左側が通常の韻律、右側が韻律終止)。韻律終止が単語の終わりを伴わないことはまれである。
ピリオドの終わりは短要素(breve)にはならず、ビケプス(biceps; i.e. u u )になることもない。短音節(brevis)がピリオドの終わりにある場合は、''短音節がピリオドの終わりにある''(brevis in fine versus)という。

ある要素の韻律抑制が最後、または1つ前の要素以外にも認められる韻律が存在し(e.g. ia., tr., io.)、この場合の現象は''シンコペーション''(syncopation)と呼ばれる。
ピリオドの最後の韻律要素に入る音節は一般に、音節の実際の現れ方を見る限りにおいては、長音節でも短音節でもよいように見え、したがって「ピリオドの最後の韻律要素は必ず不定長要素になる」ということもできるが、内部的韻律対応(internal responsion)を考えた場合には多くの場合、ピリオドの最後の韻律要素は長要素になることが要求されている(Maas, §34 [p.29])。したがってむしろ「ピリオドの最後の韻律要素は必ず長要素になる」といった方がよい。例えば、ヘクサメトロスは

***コーロンの属性 [#ta0bf1d6]
CENTER:&size(24){- u u - u u - u u - u u - u u - `x' |};

コーロンの切れ目と単語の切れ目が一致することが普通だが、そうでない場合もある。1つの単語がコーロンの切れ目をまたぐ時、この現象を''???''(συνάρτησις, synartesis)と呼ぶ。
と書くよりも

CENTER:&size(24){- u u - u u - u u - u u - u u - `-' |};

と書いた方がよい。

長要素の中に短音節が入っている場合、''長要素中に短音節が入っている''(brevis in longo, i.e. syllaba brevis in elemento longo)という。この場合に不足する長さは、休止(pause)によって補われる。


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