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エウリーピデース『メーデイア』(Euripides, Medea

Last updated: 2013/06/15 by MATSUURA Takashi

参考文献

注釈

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その他

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登場人物

人物ギリシア語名略号(ギ)ラテン語名略号(ラ)説明
乳母ΤρόφοςΤρ.NutrixNut.メーデイアの子どもたちの乳母
子守ΠαιδαγωγόςΠα.PaedagogusPaed.メーデイアの子どもたちの子守
メーデイアΜήδειαΜη.MedeaMed.
女たちより成る合唱隊Χόρος γυναικῶνΧο.Chorus mulierumCho.コリントスの女たち
クレオーンΚρέωνΚρ.CreonCre.コリントス王
イアーソーンἸάσωνΙα.IasonIas.
アイゲウスΑἴγευςΑι.AegeusAeg.アテーナイ王
使者ἌγγελοςΑγ.NuntiusNun.
メーデイアの子どもたちπαῖδες ΜηδείαςΠα.Filii MedeaePuer

役者の割り振り(推定)

第1俳優第2俳優
1–48Nut.
49–95Paed.
96–130Med.
131–203
204–214
214–270
271–356Cre.
357–445
446–622Ias.
623–626
627–662
663–758Aeg.
759–865
866–975Ias.
976–1001
1002–1080Paed.
1081–1115
1116–1120
1121–1230Nun.
1230–1250
1251–1292
1293–1316Ias.
1317–1403Med.
1404–1419

黙り役

(原則として)せりふのない役は以下の通り.

舞台

コリントス.メーデイアの家の前.メーデイアの夫イアーソーンはコリントス王クレオーン(Κρέων, Creo)の娘グラウケー(Γλαυκή, Glauca)と結婚しようとしている.

背景

アルゴー船物語

これはトロイア戦争より前のできごとである.テッサリア地方マグネーシアに位置するイオールコス(Ἰωλκός, Iolcus)の王アイソーン(Αἴσων, Aesōn)の王座を兄弟のペリアース(Πελίας, Peliās)が奪った.ペリアースはアイソーンの息子イアーソーンに,現在のグルジアに位置するコルキス(Κολχίς, Colchis)のアレースの神殿にある金の羊毛を取ってくるように命令した.イアーソーンは仲間とともにアルゴー船でコルキスに向かった.イアーソーンはコルキス王アイエーテース(Αἰήτης, Aiētēs)に金の羊毛を渡すよう頼んだが拒まれた.しかしイアーソーンに恋したアイエーテースの娘メーデイアの助けを密かに借りて盗み出すことに成功し,メーデイアとともに出航した.アイエーテースはこれを追跡したが,メーデイアは弟のアプシュルトス(Ἄψυρτος, Apsyrtus)を殺し,その体を切り刻んで海の中に投じた.アイエーテースはこれを拾い集めているうちにアルゴー船を取り逃がしてしまった.

ペリアースの殺害

メーデイアはペリアースの娘たちに,老いた羊を切り刻んで煮て若返らせる術を見せた.娘たちはペリアースを若返らせるために切り刻んで煮たが,彼は死んでしまった.イオールコスの人々は怒り,イアーソーンとメーデイアは,メーデイアの父アイエーテースの生まれたコリントスに向かった.

書き出し(第1--6a行)

(ΤΡΟΦΟΣ)

εἴθ' ὤφελ' Ἀργοῦς μὴ διαπτάσθαι σκάφος

Κόλχων ἐς αἶαν κυανέας Συμπληγάδας,

μηδ' ἐν νάπαισι Πηλίου πεσεῖν ποτε

τμηθεῖσα πεύκη, μηδ' ἐρετμῶσαι χέρας

ἀνδρῶν ἀριστέων οἳ τὸ πάγχρυσον δέρος

Πελίᾳ μετῆλθον.

(乳母)

あらすじ

おおむね 1024 x 768 ピクセルの画面にブラウザのウィンドウを最大化した状態でちょうどよいようにセル幅を指定してありますが、ブラウザによっては見づらい場合もあると思います。以下を調整してみてください。

breviata
an.
anaphaest
d.-e.
dactylo-epitrite
ex(x).
exit / exeunt
ia. tr.
iambic trimeter
in(n).
init / ineunt
韻律あらすじ入退場
1–130πρόλογος
1–48ia. tri.乳母の登場(1).乳母による独白.アルゴー船の遠征が行われなければ,あるいはイアーソーンとメーデイアの仲がよければ今のような状況にはならなかったのに,と嘆く(1–15).今イアーソーンはメーデイアと自分の子どもを捨ててクレオーンの娘グラウケーと結婚しようとしていることを述べる.Nut. in. (1)
49–95ia. tri.子守が子どもたちを連れて登場(49).子守と乳母の間の対話.子守はメーデイアに,クレオーンがメーデイアと子どもたちを追放しようとしていることを伝える.Paed. in. (49) & Paed. ex. (95)
96–130an.メーデイアが家の中で嘆きの歌を歌い,乳母がそれに応えて歌を歌う.
131–213πάροδοςan.メーデイアの歌を聴き,合唱隊が入場する.Cho. in. (131) & Nut. ex. (203)
214–409ἐπεισόδιον αʹia. tri.メーデイアの登場(214).女の,特に夫の家庭に入る妻の境遇を嘆く.クレオーンの登場(271).メーデイアに,2人の子どもとともに追放することを告げる.メーデイアはそのわけを尋ね,クレオーンは奸計に長けたメーデイアを残すわけにはいかないと言う.1行対話(324–339)でメーデイアはクレオーンに追放を思いとどまるように言う.クレオーンは拒むが,メーデイアは1日の猶予を乞う.クレオーンは逡巡するが,それを許す.クレオーンの退場(356).メーデイアはクレオーン王,娘グラウケー,自分の夫イアーソーンを殺すための方策を練り,毒薬がよいと結論づける.またコリントスから逃げた後,自分を受け入れてくれる町があるかどうか心配する.Med. in. (214) & Cre. in. (271) & Cre. ex. (356)
410–445στάσιμον αʹd.-e.合唱隊が男のいつわりの心を非難する.
446–626ἐπεισόδιον βʹia. tri.イアーソーンの登場(446).王に従わないメーデイアをなじる.メーデイアは,イアーソーンの命を救ってきたのは自分であると言う.イアーソーンは,確かにそうではあるが,自分を助けたおかげでむしろ得をしたことの方が多いだろうと言う.今,王の娘と結婚しようとしているのは,イオールコスから逃れてきた自分たちが幸せになるための方法がそれしかないからだと主張する.メーデイアは,それならなぜ自分を納得させてから結婚しようとしなかったのかと言う.Ias. in. (446) & Ias. ex. (622)
627–662στάσιμον βʹd.-e., aeol.合唱隊はアプロディーテーが愛の矢を放つことのないようにと歌い,祖国を離れた者の苦しみを歌う.
663–823ἐπεισόδιον γʹia. tri.アイゲウスの登場(663).彼は旅人の姿をしているので,それはなぜかとメーデイアは尋ねる.アイゲウスは,どうすれば子宝に恵まれるか,アポッローンから神託を得るためにデルポイに行ったと言う.神託は「革袋の突き出た口をほどいてはならぬ」というものであった.悲しい顔をしているメーデイアにアイゲウスはそのわけを尋ねる.そのわけを知るとアイゲウスはメーデイアをアテーナイに迎え入れると言う.アイゲウス退場(758).メーデイアはグラウケーとクレオーンの殺害計画を明らかにする.結婚の衣装に毒を塗り,イアーソーンと自分の子どもたちを呼び寄せ,子どもたちにそれを持たせて,追放を免れるよう頼むためにグラウケーに贈る.これに触れた者は死ぬというものである.Aeg. in. (663) & Aeg. ex. (758)
824–865στάσιμον γʹd.-e., aeol.合唱隊はアテーナイのことを歌い,メーデイアが我が子を殺すことのないようにと願う.
866–975ἐπεισόδιον δʹia. tri.イアーソーンの登場(866).メーデイアはイアーソーンとグラウケーの結婚に納得したふりをして子どもたちを家から呼び寄せる(894).しかしメーデイアは涙に暮れている.イアーソーンはそのわけを尋ねる.メーデイアは,自分はコリントスを離れるが,子どもたちのことは追放せず,イアーソーンに育ててほしいと言う.イアーソーンは,自分がクレオーンにその旨伝えても許されるかどうかわからないと言う.メーデイアはグラウケーから伝えればどうかと言い,イアーソーンも同意する.そこでメーデイアは結婚の衣装を子どもたちに持たせてグラウケーのもとに遣わす.Ias. in. (866) & Ias. ex. (975)
976–1001στάσιμον δʹd.-e.子どもたちは殺められる定め,グラウケーは毒薬で死ぬことになる,またそれらはイアーソーンがグラウケーと結婚することが原因であると歌う.
1002–1080ἐπεισόδιον εʹia. tri.子守が子どもたちを連れて登場する(1002).子どもたちが追放を免れたことを伝える.しかしメーデイアは喜ばない.メーデイアは自分の子どもたちを前にして,彼らを殺めることをためらう.Paed. in. (1002) & Paed. ex. (1080)
1081–1115an.子どもを産んだことのない者は幸せである,子どもを産んだ者には苦労が絶えない,また苦労して育てた子が将来よい者になるのか,悪い者になるのか,わからないと合唱隊が歌う.Nun. in. (1121) & Nun. ex. (1230)
1116–1250ἐπεισόδιον ϛʹia. tri.使者の登場(1121).グラウケーとクレオーンがメーデイアの毒薬によって亡くなったことを伝える.メーデイアは喜ぶ.使者は彼らの亡くなる時の様子を伝える.使者の退場(1230).メーデイアは,自分の2人の子を殺めてコリントスを離れる決心ができたことを告げる.メーデイアの退場(1250).Med. ex. (1250)
1251–1292στάσιμον εʹdoch.合唱隊は自らの子どもたちを殺めようとしているメーデイアの恐ろしさを歌う.すると子どもたちの叫び声が家の中から聞こえる(1271–1278).子どもたちは殺される.合唱隊は自らの子どもを殺めた女はイーノーだけだと言い,メーデイアのむごさを歌う.
1293–1419ἔξοδοςia. tr., an.イアーソーンの登場(1293).メーデイアの仕業を知り,子どもたちを殺しはせぬかと心配する.合唱隊長は,すでに子どもたちが亡くなったことを伝える.イアソーンはメーデイアの家の扉を無理矢理開けようとする.するとメーデイアが竜に引かれた車に乗り,子どもたちの亡きがらを抱いて上方に現れる.イアーソーンは,母親でありながら自らの子どもたちに手をかけたメーデイアを非難する.メーデイアはイアーソーンの不実を責め立てる.イアーソーンは子どもたちのを葬らせてほしいと頼むが,メーデイアはヘーラーの神殿で自ら葬り,自分はアテーナイに行くと言う.イアーソーンは子どもたちを失った悲しみを歌う.Ias. in. (1293) & Med. in. (1317) & Med. ex. (1403)

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