eLearning/Greek

Dinarchus(デイナルコス)

Last updated: 2008/08/20 by MATSUURA Takashi

以下のページも参考にしてください(何人かの弁論家が一緒に扱われている場合があります)。

以下の記事は主に Worthington, Greek Orators II, 1--41 によります。

Vita

ハリカルナッソスのディオニューシオス(Dionysius Halicarnassensis; D.H.)が主要な出典である。偽プルータルコス(Ps.-Plutarchus)は、ディオニューシオスにない点をいくつか伝えているが不正確な点もある。ポーティオス(Photius)は偽プルータルコスからの抜粋だと考えられる。『スーダ』(Suda)は同名のコリントスの政治家と混同している。

出典できごとその他のできごと
336ピリッポスII世暗殺、アレクサンドロス大王即位
361/0D.H. Din.コリントスに生まれる
ante 338アテーナイに移住する
338Rutilius Rufusカイロネイアの戦いで戦う
336/5logographus になる
324ハルパロスがアテナイに亡命しようとする
323ハルパロス事件の弁論作成を依頼されるアレクサンドロス大王死去、ラミア戦争
307/6カルキスへ亡命する
292/1アテーナイに戻る
? (290?)

コリントスの裕福な家に生まれ、アテーナイに移住して弁論を学ぶ。アテーナイに移住して間もなく、マケドニアのピリッポスII世との戦争で、ギリシア側の兵士として戦った(カイロネイアの戦い)。テオプラストス(テオフラストス)に学び、パレーロン(Φάληρον; Phalerum)のデーメートリオス(Δημήτριος Φαληρεύς; Demetrius Phalereus)の講義に出席していたらしい。紀元前330年代の中頃からアテーナイで弁論代作者として活動する。居留外国人(μέτοικος; metic)であるために弁論代作に専念することができ、それによりかなりの財を成したと考えられている。

紀元前307年、デーメートリオス・ポリオルケーテース(Δημήτριος Πολιορκητής; Demetrius Poliorcetes)がアテーナイからパレーロンのデーメートリオスを追放したので、デイナルコスも亡命せざるを得ず、カルキスへ行き、そこで15年間を過ごした。紀元前290/1年にデーメートリオス・ポリオルケーテースの許しを得てアテーナイに戻る。戻った後はプロクセノス(Proxenus)の家に住まわせてもらっていたが、その間に彼のかなりの財産をプロクセノスがくすねたということで、プロクセノスを訴えた。この最初の弁論で彼は初めて法廷で実際に弁論を行った(居留外国人にはアテーナイ市民と同じ権利が与えられていなかったため)。彼がいつ、どこでどのように死んだのかはわからない。

ハルパロス事件が彼の経歴の上での転換点であり、アテーナイ市より作成を依頼されたこの事件で弁論代作者として名声を得た。アレクサンドロス大王の死後、カッサンドロス(Cassander)がアテーナイを治めていた317--307年が彼の最盛期(ἀκμή)であるといえる。

デイナルコスの評価

デイナルコスは「アッティカ10人の弁論家たち」の中に加えられてはいるものの、古代から低い評価しか与えられてこなかった。ハリカルナッソスのディオニューシオスは、デイナルコスはデーモステネース、リューシアース、ヒュペレイデースに劣っており、名声を得たのはアレクサンドロス大王の死後、彼より優れた弁論家がいなくなってしまったためだと言っている(実際「アッティカ10人の弁論家たち」のうちの何人かはその時期に処刑されたり、自殺したりしている)。ディオニューシオスの評価によれば、彼は「田舎のデーモステネース」であり、カッリマコスやキケローが優れた弁論家として評価しているのにも関わらず、現代の評価はディオニューシオスのそれと同じである。

弁論

彼の代作した弁論の数は160とも60とも言われているが、61というのがもっともありそうな数である。そのうち29が公訴に関するもの、32が私訴に関するものである。残っているのは公訴に関する3つの弁論である。

1--3はいずれもハルパロス事件に関する弁論である。『デーモステネース弾劾』は、第33/34, 64, 82節に欠落がある他は完全に残っている。他の2つは不完全である。他に断片がある。

  1. In Demosthenem / Κατὰ Δημοσθένους (『デーモステネース弾劾』)
  2. In Aristogitonum / Κατὰ Ἀριστογείτονος(『アリストゲイトーン弾劾』)
  3. In Philocleum / Κατὰ Φιλοκλέους(『ピロクレース弾劾』)

参考文献

テキスト・注釈

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