eLearning/Greek/Aristophanes

アリストパネースの韻律

喜劇の韻律は、悲劇のものと基本的には同じである。

以下では、音律(prosody)については既知とする。韻律などの(ここでの)記号に関しては eLearning/Metre を参照のこと。

悲劇の韻律(せりふ)

イアンボス・トリメトロス

u - という長短の組み合わせのことをイアンボス(ἴαμβος; iambus [OLD s.v. 1]; iamb)といい、x - u - という韻律単位のことをイアンベイオン(ἰαμβεῖον [sc. μέτρον]; iambeus; iambic meter)という。イアンベイオンが3つ組合わされたものがイアンボス・トリメトロス(ἴαμβος τρίμετρος; iambus [OLD s.v. 2]; iambic trimeter)である。悲劇のせりふの大部分は、1行ごとに(κατὰ στίχον; stichic)イアンボス・トリメトロスが繰り返される形をとる。

Iambic Trimeter
x - u - x - u - x - u -

カエスーラ

イアンボス・トリメトロスにおいては、行の中で単語の終わりがよくくる位置があり、その位置のことをカエスーラ(caesura)という。caesura は第5音節の後にくることが多く、その位置に caesura がない場合は第7音節の後にくる。

Caesura
x - u - x | - u | - x - u -

Porson の法則

3つ目の anceps(第9音節)には韻律上の制限が加わり、これをPorsonの法則(Lex Porsoniana; Porson's Law)という。これは次のような法則である。

  1. まず、3つ目の anceps が単音節語の場合は、以下の考察の対象から除いておく。
  2. 3つ目の anceps が長( - )の場合と短( u )の場合で表現の仕方が異なる。
    1. 3つ目の anceps が長ならば、その anceps の後に単語の終わりはこない(表現方法1)。
    2. 3つ目の anceps の後に単語の終わりがくるならば、その anceps は短である(表現方法2)。

上の i, ii は対偶になっていることがわかれば、どちらか一方を覚えるだけでよい。Porson の法則を図示すれば次のようになる。なお、例えば `-' は、「この長音節に注目すべき」を表す。

Lex Porsoniana
単音節語の場合を除く。
表現方法1
x - u - x - u - `-'_- u -
表現方法2
x - u - x - u - `u' | - u -

表現方法1の場合は、3つ目の anceps とその次の音節の間に、あたかも橋が渡されているようになっていることから、Porson の橋(Porson's Bridge)ということもある。

分解

今までみてきたイアンボス・トリメトロスは1行が12音節から成っていたが、実際には、そのうちの長音節が短音節2つで置き換えられる場合があり、この現象を分解(resolution)と呼ぶ。分解が起こりやすいのは(分解する前の)第2, 4, 6, 8音節(長音節)と第1音節(anceps)である。固有名詞の場合は(韻律に合わせるのが難しいので)第5, 9音節(anceps)が分解されることがあり、もともと短音節である第3, 7音節が短音節2つに分解されることもある。

なお、エウリーピデースの場合、劇の年代が下るにつれて分解の頻度が高くなるので、これを用いて上演時期が不明な劇の年代を推測することが行われている。

喜劇の韻律(せりふ)

イアンボス・トリメトロス

悲劇と比べて次の点が異なる。


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