Porson フォントはイギリスで開発されたフォントです。1790年代に Cambridge University Press によってこの新しいギリシア語フォントの開発が始まりました。彫刻師のリチャード・オースティン(Richard Austin)は古典学部で特に美しいギリシア語を手書きすることでも有名だった*1 リチャード・ポーソン(Richard Porson)に頼んで、彼の文字を元にすることを決めました。完成は1809年、ポーソンの亡くなった次の年でした。このフォントはすぐにイギリスやアメリカで使われるようになりました。Oxford University Press の出版物では今でも使われています。ギリシアでは Pelasgika と呼ばれています。
Porson フォントを元にして Greek Font Society が開発したのが GFSPorson フォントです。Open Type と、TeX 用の Type 1 フォントが公開されています。
δの「ヒゲ」の部分やεの形状など、若干不満な点もありますが、ほぼ忠実に Porson フォントを再現したものだといえるでしょう。なお、大文字は立体のみです。
GFSPorson の TeX 用フォントは比較的簡単にインストールできます。
以下の作業を自動的に行うシェルスクリプトです。
使用の前に TeX におけるフォント の「シェルスクリプト」の項の注意を必ず読んでください。作業終了後に root で
# mktexlsr # updmap-sys
を実行するのを忘れないようにしてください。なお、そのあとで
# cd /var/tmp/ # rm -rf texfontswork
を実行して、インストール用の一時ディレクトリを削除することをお勧めします。
からファイル一式をダウンロードします。
適当なところに解凍します。ここでは、シェルスクリプトに合わせて /var/tmp/texfontswork に解凍します。
$ mkdir /var/tmp/texfontswork $ cp GFSPorson-for-LaTeX.zip /var/tmp/texfontswork $ cd /var/tmp/texfontswork $ unzip GFSPorson-for-LaTeX.zip
GFSPorson-for-LaTeX を解凍すると
というディレクトリができるので、それぞれの下にあるファイルを TeX におけるフォント の「フォントの配布」にある規則にしたがってインストールします。インストールする際のディレクトリ名は「GFS/Porson」にします。例えば type1 ディレクトリの下にある *.pfb ファイルは
ディレクトリにコピーします。
# mktexlsr # updmap-sys --enable Map=gfsporson.map
$TEXMFLOCAL/doc/latex/GFS/Porson/gfsporson.pdf が簡単な使用方法のドキュメントです。組版の見本は同じディレクトリにある PorsonSpecimen.pdf です。
プリアンブルには次のように書いておきます。teubner.sty や japanese.sty と共存することもできます。
¥usepackage[greek]{babel} ¥usepackage{gfsporson}
GFSPorson フォントを使用する場合、その箇所の前でギリシア語を使うようにしてから、その箇所を ¥textporson で囲みます。¥begin{porson} ... ¥end{porson} の environment 型も使えます。
¥selectlanguage{greek} ¥textporson{dokim'h}
¥selectlanguage{greek} ¥begin{porson} dokim'h ¥end{porson}
のようにします。¥selectlaguage を使わなくてもギリシア語フォントの出力はできますが、ハイフネーションなどが正しく処理されないので、使った方がよいでしょう。
TeX におけるフォント に「フォントテーブル」についての解説があります。GFSPorson の場合は、「gporsonrg6r」というフォント名になります。具体的には次のようにしてフォントテーブルを取り出します。
$ tex testfont This is TeX, Version 3.141592 (Web2C 7.5.4) (/usr/local/teTeX/share/texmf-dist/tex/plain/base/testfont.tex Name of the font to test = gporsonrg6r Now type a test command (¥help for help):) *¥table *¥end [1] Output written on testfont.dvi (1 page, 10532 bytes). Transcript written on testfont.log.