eLearning/Greek
Tragoedia(悲劇)†
このページではギリシア語による悲劇についてのみ言及しています。ギリシア語・ラテン語による劇一般については次のページを参照してください。
用語と訳語†
英語 | 日本語訳 | 説明 |
recitative | 叙唱(的) | |
lyric | 歌唱(的) | |
Dramatis personae†
- 合唱隊長
- 合唱隊長は他の合唱隊員とは違ってせりふをもつ。合唱隊長によるせりふは次の場合に多い。
- 対話の部分で役者と話すとき
- 歌と対話の部分の間
- 人物の到着や出発を伝えるとき
- 叙唱的アナパイストス(recitative anaphaest)の部分
ギリシア悲劇は、俳優によるせりふ(dialogue)の場面(scene)と合唱隊による歌が、交互に繰り返される構成を取る。一般に最初はせりふの場面で始まり、合唱隊が入場して非ストロペー型の歌を歌う。その後はせりふの場面と合唱隊によるストロペー型の歌が交互に繰り返され、最後はせりふの場面になって、合唱隊が退場する。
なお、下の表はギリシア悲劇の構成を「おおまかに」述べただけであって、したがってすべての劇がこの構成に忠実に従っている、というわけではない。また、以下のような区分とその名称はアリストテレースに初めて現れる点にも注意する必要がある。
名称 | 解説 |
プロローグ(πρόλογος, prologos; prologus; prologue) | 合唱隊(χορός, khoros; chorus)の入場前の部分。普通は全2場から成り、第1場は独白プロローグ(prologue-monologue)となっていることがある。狭義のプロローグはこれによって定義される。独白プロローグはエウリーピデースではよく用いられるが、ソポクレースでは少ない。 |
パロドス(πάροδος, parodos) | 合唱隊の入場のこと、または入場の時に合唱隊が歌う歌の名前。この時に俳優はステージ上にいる場合もあるし、いない場合もある。 |
第1エピソード(ἐπεισόδιον, epeisodion; episode) | パロドスと、第1スタシモンの間の場面のこと。 |
第1スタシモン(στάσιον [sc. μέλος], stasimon) | 合唱隊による、ストロペー型の歌。 |
第2エピソード | 第1スタシモンと第2スタシモンの間の場面。 |
第2スタシモン | 第2番目のスタシモン。一般にスタシモンは劇が進むにつれ短くなる。 |
. . . | この後エピソードとスタシモンが交互に繰り返される。それぞれ第4または第5まで繰り返されることが多い。 |
エクソドス(ἔξοδος, exodos) | 最後のスタシモンの後の場面。エウリーピデースでは、ここで機械仕掛けの神(deus ex machina)が登場することが多い。 |
紀元前4世紀には、合唱隊による間奏曲(choral interlude)によって、劇全体が5つの部分(μέρη)、すなわち「全5幕」に分けられることが普通になった。
対話の場面の分類†
対話の場面はおおよそ次のように分類される。
長い対話†
- 語り(ῥῆσις, rhesis)
- 俳優がトリメトロスで述べる長いせりふ。修辞的に書かれ、劇の筋書きに対して重要な役割を果たしている。
- 論争(ἀγὼν λόγων, agon logon; contest of speeches;「せりふの戦い」)
- 論戦。2人の俳優が比較的長いせりふを交互に言い合うもの。それぞれのせりふの後に合唱隊長(κορυφαῖος, koryphaios)による、通常は2行のせりふが続く。これは第3俳優の前で演じられることがあり、この場合第3俳優は審判の役割を果たすことになる。多くの場合、この後に論争的な短い対話(1行対話や2行対話)が続くことが多く、そこで議論が先鋭化される。
- 使者の語り(messenger-rhesis)
- 劇全体の 2/3 から 4/5 あたりで使者が登場し、長いせりふを述べることがよくある。これは場合によっては劇のはじめの方で起こることもあるし、2回起こることもある。
短い対話†
- 1行対話(στιχομυθία, stikhomythia; stichomythia)
- 多くの場合、2人の主要人物による1行ずつの対話。トリメトロスのこともあるし、テトラメトロスのこともある。それぞれのせりふが1行で述べられなければならないため、文法上の省略(ellipsis)やサスペンション(suspension)が起こることがよくある。
- 2行対話(διστιχομυθία, distikhomythia; distichomythia)
- 2行対話は1行対話のバリエーションと見なすことができる。
- 連続アンティラベー(continuous antilabe)
- A::B / A::B / A::B のように、俳優2人が1行を分割してせりふを述べる部分が長く続く場合をいう。これは通常、1行対話の後に続けて置かれ、対話の速度を増すために用いられる。
eisodos†
cf. Pollux 4.126--127.
ビュザンティオン三篇選集(Byzantine Triads)†
- A.
- Pr., Th., Pers.
- S.
- Aj., El., OT
- E.
- Hec., Or., Ph.
参考文献†
校訂本†
複数の悲劇詩人に関わるものや断片集。
- Brunck, R. F. P. (ed.), Aeschyli tragoediae Prometheus, Persae et Septem ad Thebas, Sophoclis Antigone, Euripidis Medea (Argentorati, 1779). Google Books
- Erasmus, D. (ed.), Tragoediae selectae Aeschyli, Sophoclis, Euripidis (Henr. Stephanus, 1567). Google Books
- Nauck, A. (ed.), Tragicorum graecorum fragmenta (Lipsiae, 1856).
- Snell, B., et al. (edd.), Tragicorum Graecorum fragmenta (Göttingen, 1971– ). [TrGF]
- Wright, M. (tr.), The Lost Plays of Greek Tragedy, i: Neglected Authors (London, 2016).
- ——— (tr.), The Lost Plays of Greek Tragedy, ii: Aeschylus, Sophocles and Euripides (London, 2018).
研究書†
- Baechle, N., Metrical Constraint and the Interpretation of Style in the Tragic Trimeter (Lanham, MD, 2007).
- Blaydes, F.H.M. (ed.), Analecta tragica Graeca (Halis Saxonum, 1906). Internet Archive
- Carter, D.M., The Politics Of Greek Tragedy (Exeter, 2007).
- Dik, H., Word Order in Greek Tragic Dialogue (Oxford, 2007).
- Lattimore, R., The Poetry of Greek Tragedy (Baltimore, 2003). JHUP
- MacCoskey, D.E., and Zakin, E. (eds), Bound by the City: Greek Tragedy, Sexual Difference, and the Formation of the Polis (Albany, NY, 2009).
- Pietruczuk, K., Aeschylus, Sophocles and Euripides between Athens and Alexandria: A Textual History, Quaderni di Seminari Romani di cultura greca, 25 (Roma: Quasar, 2019). Edizioni Quasar
- Scodel, R., An Introduction to Greek Tragedy (Cambridge, 2010).
- Wilamowitz-Moellendorff, U. von, Einleitung in die Griechische Tragödie (Berlin, 1907). Internet Archive: 1 2
- Zieliński, T., Tragodumenon libri tres (Cracoviae, 1925).