たとえば Adobe Garamond フォントを T1 エンコーディングで使う場合には,t1pad.fd のようなファイルが必要である.
% t1pad.fd \DeclareFontFamily{T1}{pad}{} \DeclareFontShape{T1}{pad}{m}{n}{ <-> padr8t}{} \DeclareFontShape{T1}{pad}{m}{it}{ <-> padri8t}{} . . .
欧文部分が T1 エンコーディングのみの場合はこれで問題ない.
ギリシア語部分には LGR エンコーディングを用いるので,ギリシア語を含む場合にはこの方法だけでは不十分なはずである.しかし TeX では,あるエンコーディングを定義した場合には,デフォルトのフォントを指定することになっているので,代用を行ってくれる.
LaTeX Font Warning: Font shape `LGR/pad/m/n' undefined (Font) using `LGR/cmr/m/n' instead on input line 37.
これは,「LGR エンコーディングで,ファミリーが pad,シリーズが m,シェイプが n のものが定義されていないので,ファミリーが cmr,シリーズが m,シェイプが n のもので代用する」という意味である.したがって Computer Modern フォントの LGR エンコーディングのものが使用される(これは通常 cbfonts のものが使われる).
lgrpad.fd のようなファイルを作って,LGR エンコーディングで使用されるフォントを定義することができる.
% lgrpad.fd \DeclareFontFamily{LGR}{pad}{} \DeclareFontShape{LGR}{pad}{m}{n}{ <-> tfmname1}{} \DeclareFontShape{LGR}{pad}{m}{it}{ <-> tfmname2}{} . . .
これは Adobe Garamond に従属するギリシア語フォントが存在する場合には有効だが,一般にはそのようなものは存在しない(Adobe Garamond にはギリシア語のグリフが存在するが,ローマ文字を Adobe Garamond で組んだとしても,ギリシア文字にはそれを使うというわけではない).したがって,このファイルは $TEXMF に入れておくべきものではないと考えられる.
穏当な方法は,おそらくそれぞれの .tex ファイルと同じディレクトリに,その .tex ファイル用の .fd ファイルを作成して入れておく,というものである.
ある範囲で一括してギリシア文字用フォントを変更したい場合にどのような方法を用いるかを決定するのは難しい.西洋古典学においてはギリシア語の部分は \foreignlanguage{greek}{Text} くらいの頻度で使うのが普通なので,三日月型シグマを用いる論文では,\foreignlanguage{greek}{\fontfamily{ls-alfpsn}\selectfont Text}とすれば目的は達成できるが,一括して変更した方がスマートである.このような場合は三日月型シグマを用いる論文内のみで有効なように
\renewcommand*{\rmdefault}{ls-padj} \normalfont
を宣言して,t1ls-padj.fd と lgrls-padj.fd を作成すればよい.t1ls-padj.fd は t1padj.fd と同じ内容でよい.
以上のようにすれば \selectlanguage{greek} などでギリシア語に切り替えられている場合にも応用できる.